先日、駅弁ファンにとって非常にショックなニュースが飛び込んできました。あの日本を代表する名駅弁「湖北のおはなし」で知られる調製元、井筒屋さんが3月20日をもって駅弁事業から撤退されます。
今年は阪神百貨店の駅弁大会が、売り場改装工事の影響で中止になったため、京阪の駅弁大会が大阪唯一になってしまいました。貪瞋癡でラーメンをいただいたあとに、輸送駅弁のラインナップを見てみましたが、残念ながら井筒屋の駅弁はなし。さすがに駅弁だけのために米原には行けないので(笑)、これで井筒屋の駅弁とはお別れになりそうです・・・(T_T)
それにしても、PDFのリリースに書かれている「昨今の食文化は娯楽化がもてはやされ、誤った日本食文化の拡散、さらには食の工業製品化が一層加速し、手拵えの文化も影を潜めつつあります」とある文章は痛切ですね・・・
デパートの駅弁フェアには大勢の客が詰めかけますが、どれも高級食材をこれ見よがしに並べた”駅弁”ばかり。その食材も、アメリカ産牛タン、カナダ産イクラ、ロシア産紅ズワイガニ、チリ産ウニと輸入品がほとんどというのが実情です。
本来の駅弁は「湖北のおはなし」のように、その地方の料理法で地元の材料を使って丁寧に手作りした品であるはずなのですが、そういう駅弁を評価する人は井筒屋さんが看破するように絶滅寸前です。
それでも、まだかろうじて高級食材に頼らない誠実な駅弁は残っています。今回、京阪の駅弁大会で見つけたのが名古屋駅の「元祖とりご飯」。
昭和30年に使用されていた掛け紙デザインを使用した復刻版で、今どき4桁が当たり前、2000円台も珍しくない駅弁界にあって、1個780円と値段も昭和なのが嬉しい限り。
ニ色に分けられた鶏めしは、でんぶのようなほんのり甘くフワフワの玉子そぼろがユニーク。鶏そぼろは少し濃い目の甘辛い味付けで、鶏スープで炊いたご飯と絶妙にマッチ。
おかずは、ニンジン、椎茸、たけのこ、ごぼうの煮物に、肉味が濃い鶏肉てり焼き、卵焼きという内容で、地味だけど美味しい。でも箸休めに漬物が欲しかったかな。
さすがに井筒屋さんの洗練には及ばないものの、自分的にはなかなか楽しめました。これからもしつこくそんな駅弁を探していきたいと思います。どうもご馳走様!
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